ロンドン五輪を賭けたマラソン選考

 日本陸上競技連盟は3月12日、注目を集めていたロンドン五輪の男女マラソン代表を発表しました。男子は藤原新(30)、山本亮(27)、中本健太郎(29)。女子は重友梨佐(24)、木崎良子(26)、尾崎好美(30)。関心の高かった埼玉県職員の川内優輝(25)は落選し、補欠にすら選ばれませんでした。
○…選考基準を明確に…○
 川内優輝選手は、市民ランナーで、陸連の育成選手ではなく、公務員というフルタイムで仕事をこなしながら、監督、コーチやトレーナーもなく、出勤前の2時間だけの走行と就寝前のダンベルとゴムチューブのトレーニングという独自の練習で成果を出してきました。そんな選手が五輪代表や補欠になってしまっては、恵まれた練習時間とトレーニング設備を与えられ、遠征や合宿にコーチまでつけてもらえる実業団選手や育成してきた陸連は苦々しい思いをしていたに違いありません。意図的に川内をはずしたと思いませんが、実業団選手に有利な選考になった印象が残ります。
そうでないにしても、選考基準は「五輪で活躍が期待される競技者」とあるだけで不明確。選考レース4大会から3人を選ぶのに、タイムか順位なのか基準を設定すべきと思います。
○…リオ五輪で“市民の星”を…○
 昨年12月の福岡国際で、日本人最高位となる3位を獲得し、有力候補になりながら、タイムに不満とリスクを背負って東京マラソンに挑んで五輪を逃がしました。「陸上界の前例を壊す」などと公言し、“異端児”を自任し組織にはまらず、孤軍奮闘してきた生き様が、多くの国民が拍手喝采、共感を呼んだ。
既成政党に飽きて大阪維新の会の橋下徹大阪市長を支持するのと似通っています。
日本陸連のメンツやメダル獲得も大事だが、五輪で“市民の星”が出場しメダルが取れなくても一生懸命に奮闘する姿勢に、夢と期待を国民に与えることのほうが、五輪の意義があるのではないでしょうか。4年後のリオデジャネイロ五輪で、“市民の星”が走る姿を見せてほしいものです。